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……ある\ruby{牛飼}{うしか}いがものがたる
\input{daiichi.tex}
\input{daigo.tex}
-\input{aozora.tex}
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-\endnote{3字下げ}第五日曜\endnote{「第五日曜」は中見出し}
+\section*{第五日曜}
オツベルかね、そのオツベルは、おれも云おうとしてたんだが、居なくなったよ。
まあ落ちついてききたまえ。前にはなしたあの象を、オツベルはすこしひどくし過ぎた。しかたがだんだんひどくなったから、象がなかなか笑わなくなった。時には赤い\ruby{竜}{りゅう}の眼をして、じっとこんなにオツベルを見おろすようになってきた。
-\endnote{3字下げ}第一日曜\endnote{「第一日曜」は中見出し}
+\section*{第一日曜}
オツベルときたら大したもんだ。\Ruby{稲扱}{いねこき}器械の六台も\ruby{据}{す}えつけて、のんのんのんのんのんのんと、大そろしない音をたててやっている。
十六人の\ruby{百姓}{ひゃくしょう}どもが、顔をまるっきりまっ赤にして足で\ruby{踏}{ふ}んで器械をまわし、小山のように積まれた稲を片っぱしから\ruby{扱}{こ}いて行く。\ruby{藁}{わら}はどんどんうしろの方へ投げられて、また新らしい山になる。そこらは、\ruby{籾}{もみ}や藁から\ruby{発}{た}ったこまかな\ruby{塵}{ちり}で、変にぼうっと黄いろになり、まるで\ruby{沙漠}{さばく}のけむりのようだ。
-\endnote{3字下げ}第二日曜\endnote{「第二日曜」は中見出し}
+\section*{第二日曜}
オツベルときたら大したもんだ。それにこの前稲扱小屋で、うまく自分のものにした、象もじっさい大したもんだ。力も二十馬力もある。第一みかけがまっ白で、\ruby{牙}{きば}はぜんたいきれいな\ruby{象牙}{ぞうげ}でできている。皮も全体、立派で\ruby{丈夫}{じょうぶ}な象皮なのだ。そしてずいぶんはたらくもんだ。けれどもそんなに\ruby{稼}{かせ}ぐのも、やっぱり主人が\ruby{偉}{えら}いのだ。
「おい、お前は時計は\ruby{要}{い}らないか。」丸太で建てたその象小屋の前に来て、オツベルは琥珀のパイプをくわえ、顔をしかめて斯う\ruby{訊}{き}いた。
\begin{document}
\maketitle
\input{body.tex}
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+\theendnotes
+\begin{teihon}
+\clearpage\thispagestyle{empty}
+\begin{minipage}<y>[t]{\textheight}
+\vspace{0.5\baselineskip}
+\scriptsize
+底本:「新編 銀河鉄道の夜」新潮文庫、新潮社
+ 1989(平成元)年6月15日発行
+底本の親本:「新修宮沢賢治全集 第十三巻」筑摩書房
+ 1980(昭和55)年3月
+※「〔一字不明〕」は、底本編集時の注記です。
+入力:r.sawai
+校正:篠宮康彰
+1999年2月6日公開
+2011年2月14日修正
+青空文庫作成ファイル:
+このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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+\vspace{0.5\baselineskip}
+お断り:このPDFファイルは、青空パッケージ(http://psitau.kitunebi.com/aozora.html)を使って自動的に作成されたものです。従って、著作の底本通りではなく、制作者は、WYSIWYG(見たとおりの形)を保証するものではありません。不具合は、http://www.aozora.jp/blog2/2008/06/16/62.html\ までコメントの形で、ご報告ください。
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+\end{minipage}
+\end{teihon}
\end{document}